ウィス
「俺は世良智明、探偵だ。失踪した三桜弥生さんを彼女の親父さんの依頼で追っている」
……男は出された茶にも口をつけず、厳しい目付きで幸一を見つめている。オレはこういう眼をしている人間を幾人も見てきた。疑いを抱く人間の眼が、これだ。この男は初対面の幸一を、何かしらの理由で疑っているらしい。
「……あいつなら、俺も探している」
違うだろう? お前が探しているのは、三桜弥生を殺した犯人だろう?
もうあの女が生きていると思える程、お前は楽観主義者じゃなかろう?
「ウソだな」
自称探偵は、瞬き一つせずに断定した……そう言う理由は何かな?
「お前さん、あの女の子はもう死んでいるのを、知ってるんじゃないか?」
その険しい目付き、棘のある声、抉るような皮膚感覚……ふん、幸一が殺人犯だと疑っているのか。しかし、何故?
「そう思う理由は?」
「お前自身が良く知っているだろう? 今まで何人殺してきた? いや、何人だなんて可愛いもんじゃない。百人か? 千人か? それとも万か?」
失敬な。幸一が殺したのはほんの数十人。万以上殺しているのは俺だよ、ククク……