依然
だが少年は依然、固まったまま。これには天使の少女も虚を突かれたらしい。
私は残された右腕で少女の槍の穂先をつかみ……公園の大木目掛けて投げ飛ばしてやった。声にならない苦痛のうめきと、それとは比較にならない鈍く、大きな音が夜に響く。
ここで少年がやっと動き始める。さすがに腕一本なくしては、精神集中も長くは続かないか。
私は彼が繰り出した左拳をつかみ取る。手の甲の刻印が、大きくなっていたような気がするが……構わず手首をねじり、合気の要領で転がそうとする。少年は自分から転がることで関節をとられないようにするが、その一瞬で充分。
片腕を失ってはしかたない。私は切り飛ばされた左腕を拾い……逃走する。背後で少女が少年に『追って!』と怒声をあげている……追ってはくるだろうが、まず追いつけまい。一瞬の判断の遅れは痛い。
闇夜に、本気で紛れようとする私の姿は、何人にも探せまい。