コート
そこには、腕を組んだ男が佇んでいた。コート、靴、手袋、衣服……全てが黒一色で統一されており、サングラスをかけている。まるで夜を具現したかのような男だ。
「どうしたんダイ、キョウ? 珍しいじゃナイ。ボクの部下にシテ、唯一その行動を束縛されないキミが、何の用事ダイ?」
「…………」
赤い瞳のまま、ルナはキョウと呼んだ男を魅惑するように見つめる。しかし、ルナに精神を干渉されてはいないようで、サングラスを静かに取り、それを胸元のポケットに入れた。右眼が、潰れていた。左頬にも深い傷がある。
キョウは右腕をゆっくりとあげ、ルナに向けた。闇夜に、掲げられた傷だらけの手が、ぼんやりと発光する。
すると……ルナは自身の眼を元の碧眼に戻した。
「……さっきのはウソダヨ。ヒトの社会に被害が出ないヨウ、ボクが異端種を束ねると約束しただろウ? ボクにだって人間の友達がいるんダ。ゴタゴタしたら色々困っちゃウ