アスト97
先程炎があがったのは、このビルだったはず。アストと幸一はその階段を駆け上がる。
「……本当に……ここ、なのか?」
ここまでずっと走りっ放しだったので、幸一の息はあがっている。
「間違いないわ。ただちょっと前に、ここで気配が消失したのが気になるけど」
眼の前を塞ぐ鋼鉄の扉を槍で切り裂き、駆け出すと同時にアストは槍を構え、周囲に注意を払うが……
「幸一……これって?」
「……カタがついたんだろう」
幸一もアストも、自分達の周りに監視者がいたことは知っている。おそらくは、自分達にこの存在の排除を依頼した異端種達が、とどめを刺したのだろう。
片腕を切り落され、さらにはジンの力を一瞬とはいえ、全開で放出されたのだ。よくここまで逃げられたと誉めるべきだ。
アストが風の力でこの敵の死体を完全に風化させると、
「これでとりあえずはオッケーね。じゃあ、帰り……ちょ、ちょっと、幸一?!」
青い顔で、ドサリと、焦げ臭い屋上に幸一の体が倒れ込んだ。