幸一
もっとも、そんなことを答えるつもりはないので、オレは鼻を鳴らしただけだが。
「……幸一がこんなに苦しそうにしているの、初めてよ」
だから厳しい顔付きでオレを睨んでもな……ククク。
「こいつは、悪夢を見ているのさ」
オレの言葉に、女は訝しげに目を細める。
「オレを全力で解放し、精神が疲弊した幸一は悪夢を見ているのさ……今までこいつが殺してきた人間の、な」
手に取るようにわかる。次々と浮かんでは、泡のように消えていく幸一の知り合い達。
……クハハハハハ! いいぞ、そのまま精神崩壊してしまえ! オレに身体を渡せ!
「幸一! 幸一! それは夢よ! 起きて!」
「この状態に陥っては、痛覚如きでは起きんさ」
女が焦った顔付きで幸一をゆすり続けるが……馬鹿め、無駄なことを。あとは……そう、女が幸一はもう助からないと判断し、殺しにかかるのをどうにか防ぐ算段を考えねば。ここまで追い込んでおきながら、オレが幸一を起こすのはさすがに避けたい。
「ふざけるな……! 誰が……誰が……!」
寝言をほざき出した。今まで黙って問い詰められていたらしいが、限界に達したか?
「誰が……殺したいもんか! 俺だって、俺だって……普通に、みんなと……! 殺すくらいなら、いっそ、殺された方が……!」
いいぞ! 死んでしまいたいと強く願え! それだけでお前は全ての苦しみから逃れられるぞ!
お前の身体はオレのものだ!