ぶるじょわ

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「駄目! 戻ってくるのよ! 『絶望の断崖』の向こうは貴方の居場所じゃないわ!」

 だから言っているだろう? そんなことをしても無駄だと。そんな戯言をほざくくらいなら、幸一の首を跳ね飛ばし、オレとの戦いに備えれば……寝言が聞こえなくなった……とうとう観念したか?

「幸一! 幸一! 諦めちゃ」

「……耳元で……叫ばないでくれ……鼓膜が、破れそうだ」

 戻ってきたか……しぶとい奴だ。『絶望の断崖』の手前まで行ったのはこれで三度目。一度目は初めて殺人を犯した時、二度目は父親を殺してしまったと悟った時。いずれも、感情のタガが外れ、オレの力を必要以上に解放してしまったパターンだ。

 しかし、『絶望の断崖』への距離は確実に縮まってきている。あと、一、二回で超えるかな? よく十年以上も耐えたと誉めてやるべきだろうな……クククク。

 幸一は、薄っすらと目を開け、額の汗を手の甲で拭い、

「……すまん。水を、持ってきてくれ」

 女は、コクコクと頷きつつ、一階に降りていった。

 さて……これからどう幸一や女に対応していくべきか考えるために、オレも女と同様階段をおりた。しかし、女は居間のテーブルに水の入ったグラスを置き、先程入れられた新聞に目を通していた。

『今日未明、会社員、田島義孝さん(二十三歳)の死体が発見され、警察当局は……』

 ……何故、そんな所を読んでいるのか?

 しかし、答えはすぐにわかった。

『殺害された時刻は、今日の午前一時ごろと推測され、これで一連の事件の被害者は』

 オレ達があの吸血鬼を倒したのは、まだ昨日だったはず。少なくとも、九時前だ。

 ……つまり、この事件は、まだ、終わっていない、ということだな。