デビルウィスパ
幸一は昼頃になって再び眠りに落ちた。今度は気持ち良さそうな寝息をたてている。
居間には壁に寄り掛かるオレと、椅子に座る女、そして、事件が発生した為、文句を言いに来たのだろう、仏頂面の探偵。
「……本当に……悪魔が巣食っていたのか? じゃあ、あいつは……!」
「そうだな、貴様がボロクソに言ったことは、ほとんどあいつの責任じゃないな。お前は自分の正義を果たしたと思い込んだだけで、その実、あいつを傷つけただけだ」
オレに憎々しげな視線を探偵は向けるが、
「おいおい、そんなひどい仕打ちをしたのはお前だろう? なのにどうしてオレにそんな怖い眼をする? 筋違いだろう?」
この一言で、途端に罪悪感が胸を黒く支配しはじめた。ククク、偽善者め。
顔を俯かせるあいつに、女は助け舟を出すように慌てて言葉を紡ぐ。
「ええと、世良さん? 昨日起こった殺人事件は、本当に一連の事件なの?」
「……ああ。これは、警察も圧力を掛けられて伏せている事なんだが……死体に、血が、残っていないからな。こんな奇怪な殺し方をする奴が二人もいるとは思えない」
フム、まあそうだな。
「じゃあ、私達が昨日倒したのはなんなの? あれは確かに囮の私を襲ってきたわよ?」
「お前と気付いていて、あえて襲ったんじゃないのか?」
オレの意見に女は机を見つめて、ウゥゥ、と唸り始める。
「……この事件を調べていて、思った事がある」
探偵の言葉に、オレも女も顔をあげた。
「本当にこの事件は、一人の犯人によって起こっているものなのか?」