ルス
「クソッ! なんなんだあの野郎は!」
(……そんな訳がねえだろぉ! 田村の奴も、危険だから遠ざけようとしたんじゃなくて本当に邪魔だと思ったのさ!)
吸血鬼から依頼された内容は果たせたのに、世良智明は非常に不愉快だった。その不愉快さの原因は、九条幸一の態度であった。
智明は、人の命を何とも思わない異端種のルナ・クレセントと会っている。彼女は人の命など、そこらにある石ころのように見ているのが、態度、言動から簡単に見て取れた。
だが、同じ殺人鬼の井端幸一からはそういったものが見受けられなかったのだ。感情こそ表に出していないが、むしろ……
(だからそんな訳ねえ! すまないと思っているなら、二十二人も殺せるか!)
あまつには、三桜弥生の捜査で金が尽きかけていることまで見透かされたのだ。これが怒らずにいられようか?
ガツン、と道端の石ころを、智明は腹いせに蹴り飛ばす。
真実を追い求める世良智明が、九条幸一=大量殺人者であるという事実の前に、自らの眼を曇らせたのは皮肉と言う他、無い。