蹴り
放った蹴りに手応えはない、かわされたか。膝のバネを使い、一足で女性と少年の中間地点まで後退し、私は両者に背を見せぬよう右目で少女を、左眼で少年を見つめた。
少年はすでに臨戦態勢に入っており、身に巣食う悪魔を召還している。色の反転した眼光が突き刺さるほどの強烈さで輝く。少女は風の属性を持つ槍を具現化させ、それをこちらに向かって構えている。黒の瞳は私の姿を映し出している。
そう、私と、きっちり、眼が合っているということだ。
すかさず私は彼女の精神に干渉し、その動きを奪うべく……
同時に、地を蹴る音が聞こえた。やむを得ず私は精神干渉を断念し、少年と正対する。
最初は足か、右手を用いた攻撃のはず。何故なら、左手の魔封じの刻印はとどめを刺すために必須だからだ。
予想通り……とはいかなかった。そもそも、少年は距離を詰めただけで、私の攻撃範囲に入ってこなかったからだ。そのまま私を中心に、円を描くように左側面に回り始める。
後ろがあいた。このまま後退すれば、前後から挟まれる心配は無い。そう判断した私は跳び退ろうと……膝に力を入れた瞬間、背後の大気の質が変化した。